開村5周年を迎えた「500人のオトナと500人のコドモとカルチャーが交わる3日限りの村づくりフェス」NU VILLAGE。今年は尾白の森名水公園べるが(山梨県・北杜市)との初共催にて、『NU VILLAGE × べるが a potlatch camp 2018』(以下NUVキャンプ)が、初秋の連休2018年9月22日(土)~24(月)に開催されました。


NU VILLAGE×べるが a potlatch camp 2018
NUVキャンプ  スペシャルプログラム 岸野雄一 + ジョン(犬) 「音楽影絵劇」


0歳の頃から娘を野外フェスやレイヴなどに連れ回してみたものの、親と子、どちら側にも中途半端になりがちで、やはり大人も子どもも100%楽しめるイベントづくりっていうのは難しいよな…と思いはじめていた私は、ある日3児の子をもつフォトグラファーママに「おすすめのキャンプがあるよ!」とNUVのことを教えてもらい、その主催の趣旨に、なんだか運命的なものを感じてしまいました。


NU VILLAGE×べるが a potlatch camp 2018
NUVキャンプ会場となる、白州・尾白の森名水公園「べるが」内の尾白川えん堤には、スリル満点のウォータースライダーも。


近ごろSNSなどで、ものづくりをしている知人が何組か訪れているのを見て、気になっていた「北杜市」で開催、というのもますます魅力的に映り、入村を決意。家族で参加することを心待ちにしていましたが、夫が仕事の都合で参加できなくなり、頼りない母子キャンプを心配した私の両親が代わりに加わり、じぃじ、ばぁば、母と子、4人での初キャンプとなりました。(東京生まれ、東京育ちの両親は人生初キャンプです….!)

「ポトラッチBBQ」に滑り込み!

さて、そんなわけで当日。初日の天気が少々不安定ではありましたが、秋の三連休ということで、都心部からの道は当然渋滞が予測されます。ピークを避けようと午後過ぎに相模原ICあたりを通過し、比較的スムーズに進みましたが、現地に着く頃には夕方になり、テントを張る時間にはだいぶ暗くなってしまいました。知人のフォトグラファーママは、早朝5時ころに東京を出発し、わずか2時間半ほどで到着したそうです。やはり、早起きするに越したことはありませんね!(3児+親×3日分の荷物を前日中に準備した彼女には感服します…)

NU VILLAGE×べるが a potlatch camp 2018

初日は「ポトラッチBBQ」があり、お肉や野菜などの食材や、日本酒・クラフトビールなどがふるまわれました。


我が家はキャンプの舵取りである夫不在のためテントを張るにもてんやわんやで、BBQ会場に到着できたのはPM7時過ぎ。会場では数家族ずつがグループになり、ふるまわれた食材を大人たちがせっせと焼いていました。子どもたちは焼き網の前で、今か今かと肉が焼きあがるのを待ち、威勢よく食べています。参加するのが遅すぎたため、陣地取りに失敗した私たちは、半ば食べることを諦めていましたが、近くにいた優しいお兄さんやお姉さんが、娘にお肉を分けてくれました。


NU VILLAGE×べるが a potlatch camp 2018
牛、豚、鶏肉などのいろいろなお肉や野菜、みんなが持ち寄った食材であじわう「ポトラッチBBQ」。


大人たちは少し焦げてしまったジャガイモをかじりつつ、おつまみセットとビールでようやく一休み。今朝からバタバタと移動し、人と、テントと、食べ物で既に温まっているNUV初日の雰囲気にようやく浸ることができました。

NU VILLAGE×べるが a potlatch camp 2018
NU VILLAGE×べるが a potlatch camp 2018


「ヒカリアソビの光と影あそび」


NU VILLAGE×べるが a potlatch camp 2018
夜の居住エリアは各々のテントや会場がライトアップされ、日中とはまた変わったロマンチックな雰囲気に。

NUVデイタイムの目玉!迫力満点の川遊び

二日目の朝。トイレに行きたいと起きた娘を連れ、べるがの施設にお手洗いを借りに行ってみると、山羊に会いました(野生ではありません)。テントに戻る途中、同じように小さい子が、「めぇめぇさんがいるんだよ」とパパに教えてあげており、また別の子どもが「こっちにやぎがいるよ!」とお友だちを連れていきました。この施設はパブリックエリア側にあり、NUVのテントサイトからは少し離れていますが、早朝と夜は混雑せず、「山羊に会えるトイレ」としておすすめスポットのひとつです。

NU VILLAGE×べるが a potlatch camp 2018


フリーで入場できるパブリックエリアでは、北杜ジビエ食堂やクラフトビールの出店や、ポトラッチマーケットなどが楽しめます。


昨日の曇り空を一蹴し、午前の早い時間から気温はぐんぐん上昇。子どもたちの自信作を販売する「こども商店街」でビーズのヘアゴムを買ったり、ママが気になる「宇宙相談室」をのぞいたりしながら居住エリアをぶらぶらしていると、水着とタオルをまとった子どもたちがぞろぞろとどこかへ向かっていきます。

NU VILLAGE×べるが a potlatch camp 2018

心なしか、目にする子どもたちの数が減った気が。フォトグラファーママに聞いてみると、子どもたちは川遊びに行くのだとか。ウォータースライダーもあるダイナミックな天然の川だということで、3歳半の娘でも遊べるのかな…川の中に入ることはできないかな、と思いつつ、どんな場所か一目見たいので、行ってみることに。





土地勘がないのでなんとなく川に行きそうな人の流れに乗り、しばらく歩いていくと、川側ゲートの関所を発見。スタッフさんに「川の水はすっごく冷たいですよ〜 気をつけて行ってきてください」と声をかけてもらい、楽しみに磨きがかかったところで足取り軽く下っていくと、目の前に迫力あるえん堤(ダムより小規模な堤防)が広がりました。


NU VILLAGE×べるが a potlatch camp 2018


見降ろすと、滝のように流れるえん堤のすぐ横に、人工のウォータースライダーがあり、小学生くらいの子どもたちが颯爽と滑り降りています。川の透明度の高さと水しぶきの勢いに圧倒されながら、プールのように川の水が溜まった場所から少し離れると、小さな子でも十分水遊びのできる浅瀬がありました。


娘と私は足だけ浸かりましたが、その水の冷たいこと!肩まで浸かっていたら、10秒もしないうちに悲鳴を上げてしまいそうなほどです。それでも石で小さな堤防をつくったり、拾った葉っぱを流して競争させたり、3歳児ながらの川遊びをして、かれこれ30分以上も楽しみました。

休憩所つきの温泉でお昼寝タイム

たっぷり川遊びも楽しんで、お待ちかねのランチタイム。村の広場にはフード&ドリンクの屋台があり、カレーやサンドウィッチ、おにぎり、鶏の炭火焼き、スィーツ…など色々売っていますが、娘にはミートボールの「こどもプレート」、私は「卵かけごはんと豚汁セット」をオーダー。


NU VILLAGE×べるが a potlatch camp 2018


大自然の中、青空の下でいただくお昼ごはん。このシチュエーションを醤油と共にかき混ぜた卵かけごはんは、絶品です。


お腹も心も満たされ、気持ちよくお昼寝…する気配のない娘を連れ、今度は昨晩入り損ねたお風呂へ。温泉ゲートの関所を抜けると、徒歩1分ほどの場所に「尾白の湯」があります。広々とした敷地の露天風呂には二種類のお湯があり、特に多種多様なミネラルを含む超高濃度の「赤湯」はママたちに大人気。娘は湯の中で自分の手や足が見えなくなるのを怖がり、透明な「白湯」の方に入りたがりましたが、温泉の美肌効果を最大限利用したい私は娘をばぁばに託し、赤湯にゆっくりと浸からせてもらいました。本当に良いお湯でした!


NU VILLAGE×べるが a potlatch camp 2018


尾白の湯隣の「噴水広場」は、小さな子でも安心して水遊びができ、遊具も充実。


尾白の湯には休憩所があり、思いの外空いていたので、しばらくじぃじ&ばぁばと共にお昼寝タイム。楽しいことばかりで興奮し、なかなか寝付かない娘とゴロゴロしていると、外から吹奏楽器の音が聞こえてきます。すぐ隣の噴水広場で、この後生演奏などのプログラムがあるようです。まだリハーサル中のようなので、一旦荷物を置きに、居住エリアのテントサイトへ戻ることにしました。


NU VILLAGE×べるが a potlatch camp 2018


ばぁばお気に入りのハンモックでゆらゆら揺れているころには、辺りは真っ暗に。「音庭」のDJブースから、小気味良いエレクトロニック・ミュージックが流れてきました。ミラーボールに光が当たり、「音庭」は一気に幻想的な屋外のダンスフロアへと変貌します。


NU VILLAGE×べるが a potlatch camp 2018


ハンモックで揺れるばぁば&娘を横目に、このまま電子音と共に永遠に揺れていたい…と夢心地になっていた私の耳に、どこからか「音楽影絵劇始まるよ!」との声が届き、周りの子どもたちが次々足早にかけていきました。先ほどの噴水広場での公演が始まるようです。「スタディスト(勉強家)」を名乗る文化人、岸野雄一氏とジョン(犬)によるスペシャルブログラム「音楽影絵劇」はNUVの目玉コンテンツ。みんな事前にしっかりとタイムテーブルをチェックしていたよう。

クライマックス!自然の中での贅沢な音楽影絵劇

私たちもしばらくしてから噴水広場に向かいましたが、到着した開始直前には、ステージの周りは人で埋めつくされていました。小さな娘にも見えるところに、と隙間に入れてもらって、端の方でなんとかスペースを確保。顔を上げると、輪の中心にはオオカミ犬・ジョンが、既にオルガンのイスに座ってスタンバイしています。

不協和音が続くオルガンの演奏とちびまる子ちゃんを大人にしたようなボーカル、広場の闇に映し出された不気味に挙動するおおかみの影絵、というなんともシュールで奇妙な世界観に呑み込まれ、観客みんな釘付けに。すぐ横にいたママたちも序盤に絶句していた様子でしたが、中盤あたりで少し慣れてきたのか、「何これ…  子どもたち、何を感じてるんだろう?  後で感想を聞いてみたいね」と口にしていました。(子どもたちの反応はじーっと見ている子、怖がる子、面白がる子、様々でした)


NU VILLAGE×べるが a potlatch camp 2018


独特で異次元なジョンの演奏が終わると、お次は東京・谷中出身のアンサンブル・ユニット「海藻姉妹」が登場。メンバーの“わかめ&こんぶ”がサクソフォンを、“めかぶ”が鍵盤楽器を手に、代表曲「海藻サラダ」、ペキンからパリへの旅をイメージした「ユーラシア超特急」、ポップなナンバー「キャンディガール」などを軽快な、ときに重厚なリズムでテンポ良く演奏していきます。ユニークな映像と共に次々と新しい展開が繰り広げられ、その編成力とパフォーマンス力に圧倒されっぱなしでした。






“時間のワルツ”で、ゆったりとした曲調に心地良くなったのかうとうとし始めた娘…隣に座っている男の子も気持ちよさそうにスヤスヤ眠っていました。
大自然の中、個性あふれる音楽家たちによる素晴らしい生演奏…これがコンサート会場で聴くものとはまた違った贅沢な体験であることは、言うまでもありません。



赤ちゃん、子ども、おとな、おじいさん、おばあさん、また別の家族や友だち…本当にたくさんの人が、日本各地から集結し、3日間限定の“ムラ”をつくるNUVキャンプ。(旅行以外で)東京を出たことがない両親からは「もう懲りごり!」と言われるかな、思いきや、「リフレッシュできた。また行きたい!」という意外な感想が聞けました。愉快なこと、楽なことばかりでは決してないけれど、少々大変な目に遭っても「来てよかった!」と家族で心から思える体験ができました。とりあえず、来年は自分一人でもテントを張れるようになり、新たな仲間を連れて行きたいと思います!

Nu Village
http://nuvillage.net/

白州・尾白の森名水公園「べるが」
https://www.verga.jp/

 

text&edit:Nao Asakura
photo: Tomotaka Ishii