ママでありながら、自分の魅力を生かして活躍する素敵な女性たちをご紹介する企画「mama creators interview」。
5回目にご登場いただくのは、Musica Life代表であり、ボーカリスト/作曲家/ボイストレーナーとして活躍する平井あみさん。お母さんの心音入りオリジナルソングを制作するサービス『COCOROTONE』を始めたきっかけや、歌に対する思いについて、スタジオでお話を伺いました。
マタニティ期の心音が、産後の安心素材に!

ー今年Musica Lifeも立ち上げ、「これからの未来を背負う子どもたちの未来と社会をより豊かにする音楽活動」を精力的にされています。中でも、子育て中のママやお子さま向けのサービスにはどんなものがありますか?
楽曲制作の代表としては、お母さんの心音入りのオリジナルソング『COCOROTONE』。あとは声質の改善だったり、歌うことの楽しさ、“歌で叶える美と健康”を推進する「美調律ボイス※」を基軸としたボイストレーニングを行っています。
ー『COCOROTONE』は斬新なサービスですよね!始められたきかっけは何だったのでしょうか。
自分の妊娠がきっかけなのですが、妊娠中のお母さんの心身の状態はお腹の赤ちゃんにダイレクトに伝わります。お母さんが不安定でいると、夜泣きしやすい子になってしまったり。だからマタニティの期間はとても大事なのですが、妊娠中のお母さんはどうしたらリラックスできるだろう、この時期から子どものためにできることは何だろうと考えて調べているうちに、「心音」にたどり着いたんです。

あみさんが娘さんのために作ったオリジナルのCOCOROTONE。
妊娠5ヶ月目くらいから赤ちゃんの聴力が育ちはじめ、お母さんの心音や声を聞きながら、子どもは語彙力や聞く力を育てていきます。生まれてからは、心音を聞くとお腹の中にいたときの安心感を思い出して夜泣きがおさまったり、お母さんが近くにいなくても安心感を覚えてリラックスしてくれたりするんです。
「そんな貴重な心音てどこで録れるの?」と探しても、産婦人科ではやっていない。そこで、今もCOCOROTONEで使用している胎児超音波心音計“エンジェルサウンズ”を見つけました。産院のエコー検査で使うもののミニチュア版で、赤ちゃんの心音を聞くための機器ですが、「これでお母さんの心音も録れる。それを形にして残しておけば、子どもに聞かせることができるし、産後自分の安心素材にもなる」と考え、心音入りのオリジナルソングを作ることにしたんです。
「Dear My Baby〜お腹の赤ちゃんへ贈るママの心音入りマイハートビートソング」
COCOROTONE〜胎教・寝かしつけ・リラクゼーション・出産祝い・産前産後ケア
ー妊娠中の心音がそんな有効活用できるとは知らずに、出産を終えてしまいました(泣)。妊娠中のお母さんの心音は、産前・産後のお母さんの心音と何か変わるんですか?
変わりますよ!妊娠中のお母さんの心音は赤ちゃんに一生懸命血を送ろうと活発でパワフルなのですが、産後はそれが穏やかになり、酸素の量や速さも変わってきます。
ー神秘的なお話ですね!その心音を入れたオリジナルソングは、どのような流れで制作するのでしょうか。
好みの楽器や、心音のスピードもみんなそれぞれ違うので、まず一人一人ヒアリングしていきます。自分のお子さんの名前の由来からイメージして作りたいという方、ボサノヴァが好きだからボサノヴァ調にギターを入れて作りたいという方など、オーダーは人によって様々です。
妊婦さんの心音を録音している様子。(写真提供:COCOROTONE)
心音はダンスビートのように“ドクドク”している人もいれば、スローなスピードで“ドックンドックン”としている人もいて。ビートがないトラックの裏に、心音をビートとして流すイメージです。あとはオルゴールや自然音にも癒し効果があるので、そういった音を織り交ぜたり。ビートとして流れた心音は振動として空気を通して伝わっていくので、それを感じてお子さんがリラックスするのです。
子どもと話すときは、伝えたいことによって“声”を使い分ける
ーあみさんご自身は、いつ頃から娘さん(現在2歳)に心音を聞かせていましたか?
産後二日目くらいから、娘にはCOCOROTONEを聞かせていました。最初は泣き止まないときに、試しに(オリジナルの)CDを聞かせてみたら、見事に泣き止んだんです。
「この音楽を聞くと寝る時間なんだよ、安心していいんだよ」と習慣づけることから始めて。この時期から高い音や低い音、色々な音に触れさせるのってすごく良いんです。赤ちゃんは音を聞いて「なんだろう?」と耳や脳を使うし、聞く力がどんどん育っていく。そうすると、歌や音楽によく反応するようになるんですね。
ーCOCOROTONEの効果てきめんですね!出産前日まで歌われていたとのことで、それが胎教にもなっていたようですし、日常的にお子さんが音楽に触れる機会も多いのでしょうね。
音楽を介したコミュニケーションは、親子同士の距離も縮まるし、楽しみながらの要素が増えていくので、とても有効だなと感じています。歌うにしても、話すにしても“声”ってとても重要で。子どもに一番近い存在のお母さんが“声”を工夫することで、お母さん自身も楽になるんですよ。
私は子どもと話したり声がけするとき、特に0歳や1歳児は唇の形を見ながら言葉を覚えたりするので、できるだけ顔を正面に向けて、わかりやすく唇を動かすなどしながら、目を見てゆっくりしゃべるようにしています。
ーちなみに子どもと話すとき、声のトーンは高くなりがちですが、高すぎても良くないのでしょうか。
地声くらいがちょうど良いですね。子どもにとってお母さんの声が聞きづらいキンキンする音だと、声やメッセージが届かなくなってしまうことがあります。ちゃんと聞いてほしいときは、どっしりした感じの声を出したり、注意を促したいときは少し高めにするなど、伝えたいことによって使い分けると効果的です。その声が、自然な響きなのかがポイントですね。
あみさんが日常的にお子さまに聞かせている子ども向け英語CD『えいごのうた』
あと、よく「自分が音痴だから子どもに歌を歌ってあげられない」というお母さんがいるのですが、それは一切気にする必要はありません。お母さんが楽しんで歌っていれば、それが子どもにも伝達するし、親子の絆や信頼を深めるという点では、音が取れている云々より、とにかく楽しむことが大切だと思います。
COCOROTONEは、子どもへの永遠の子守歌
ーあみさんは、いつから本格的に歌を始められたんですか?作曲もされるので、やはり幼少期からピアノを習われていたんでしょうか。
私は小さいころピアノを習っていましたが、先生が厳しく、練習も辛くて好きになれませんでした。高校生になったときに、自分でアルバイトをして稼いだお金で歌を習い始めたんです。そのボイストレーニングの先生に「洋楽が好きで、将来音楽で食べていきたいならジャズをやるといい」と勧められて意識し始めたんですが、ジャズはその日の気持ちを歌ったり、音楽で自分の気持ちを表現できるんです。
10代のときには出なかった声が、年齢を重ねたら味となってその人の表現に加わったり、おばあちゃんになっても楽しめる。「それってすごく素敵なことだな」と思い、最終的にはジャズをアメリカの大学で学ぶことになるんですが、クラシックでは味わえなかった「自由に表現すること」を知れた瞬間が、今となっては最初のジャズとの出会いだったのでしょうね。
大学を卒業した後、向こう(アメリカ)の音楽学校で5歳から80歳までの生徒さんにピアノの基礎と歌を教えていたのですが、幼児のテキストをみると、クラシックのピースだけでなく、カントリーやジャズの曲があったりと、色々な要素で音楽を楽しめるようになっていて。自分もこんなふうに小さいころから色々なジャンルの音楽に触れていられたら、表現することの楽しさを早くから知ることができていたんじゃないかな、と羨ましく思いましたね。
ーこれからの子どもたちにはぜひ、色々なジャンルの音楽に触れて表現豊かに育ってほしいですね。あみさんが近い未来目標にしていることはありますか?
ミュージシャンが職業として成り立つ仕組み作りをしたいです。アメリカには“ミュージシャンズユニオン”という体制があって、加盟していれば、リタイア後、年金ももらえるんです。日本には良いミュージシャンがたくさんいるのに、まだ職業として認められていない部分があるなと感じていて。
ミュージシャンが孤立しない環境が整えば、日本の音楽文化はもっと豊かになるだろうし、音楽を聞く側としても、豊かな音楽が届く機会が増えるのではと思っています。
COCOROTONEはもともとは子どもに送るオリジナルソングで、親から子どもへのメッセージを歌にする、という企画でした。幼いころにお母さんやおばあちゃん、誰かに歌ってもらった子守歌って、たまに思い返すと温かい気持ちになりますよね。これから100歳時代を迎える子どもたちが、長く生きていく間に孤独を味わったり、色々なことに直面していく中で、支えになってくれるもの。自分が一緒にいてあげられない時間、いなくなった後でも、子どもに残してあげられるものを、音楽を通してなら叶えられると信じています。
日々せわしない子育ての中で、次第に薄れてしまう、妊娠や出産当時の新鮮な気持ちや感動。COCOROTONEは子どもに聞かせるためだけでなく、お母さん自身が聞くと原点に戻れたり、当時の気持ちを鮮明に思い出すことができるそうです。「妊娠中に知りたかった!」という声も多いそうですが、出産を終えている人、またこれから赤ちゃんを迎える女性やファミリーへ、たくさんの人たちに知ってほしいサービスですね。
※「美調律ボイス」については次回の記事で詳しくご紹介します。
平井あみ
米国ノーステキサス州立大学Jazz科卒業後、ボーカリストとしてJazz&Popsを取り入れたコンサート、レッスン、セミナーを通し、これまで10,000人以上の方々に歌のチカラ・音楽のチカラ・素晴らしさを伝えている。作曲家としては、他アーティストや企業向けの音楽制作をはじめ、誰もが身近に「音楽を創造する喜び」を感じられる楽曲提供サービスCOCOROTONE(商標登録取得中)を提供。トレンドに流され消費されていく音楽ではなく、深く永く記憶に刻まれる音楽を制作を目指している。マイケル・ジャクソンやベッド・ミドラーのキーボーディストとして知られるMorris Pleasureをはじめ、マドンナ、セリーヌ・ディオン、ダイアナ・ロス、 久保田利伸、安室奈美恵など数々の世界的ビッグネー ムを支えて来たヴォーカリストMaxayn Lewisら海外チームとも楽曲制作に取り組んでいる。また、「歌のチカラ」普及のため執筆活動やレッスン、「歌と健康」をテーマに福祉・医療・学校関連施設にてLiveセミナー、公演活動も行なっている。2018年 健やかな美と健康を叶える歌のチカラ推進プロジェクトとして、Musica Lifeを立ち上げ、これからの未来を背負う子供達の未来と社会をより豊かにする音楽活動に勤しんでいる。
場所提供:宮地楽器 MUSIC JOY 飯田橋
edit&text:Nao Asakura
photo:Mariko Mibu